2011年02月11日

巷説 0005

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ウチとこの本篇サイト“ALL ALONG THE WATERTOWER”に “坂月高架水槽のインデックスページ” というのがあって、そのページにアップしている写真を画像編集ソフトで少しいじってみたのが上の写真である。縦横比を変えて大幅にダウンサイジングして、ひと昔前のケータイでとった写真のようなチープさをねらってみたのであるが、いかがなものだろうか。

本題に入る。“大谷口給水塔”という名称の給水塔は、ひょっとしたらどこかに実在しているのではないだろうか、と何となく不安に思えてきた今日このごろであるが、それでも“大谷口給水塔”などといった名称の土木構造物(まさか“建築物”ではあるまい)は、少なくとも日本国の東京都内には存在しているはずがない、という自分の認識は堅持せねばイカンと考えている。その結果世間とズレまくったとしても、それはそれでしかたのないことなのだ。さて今回は、“オドるブログ!” という名称のブログの “坂月高架水槽” と題された2011年1月19日付の記事に寄せられた、同日付のコメント(当該記事の筆者が書いているらしい)をご紹介することにしたい。そこではこのように述べられている。

まずは都内3大給水塔
野方給水塔→大谷口給水塔(板橋区)
→駒沢給水塔から巡ろう!


まだ“大阪都”や“中京都”や“京都都”などといった名称の自治体は存在しないはずなので、“都内”といえば東京都内ということになろう。それに“板橋区”は東京以外にはないはずだ。そうすると“大谷口給水塔”は東京都板橋区内にある“給水塔”なのだ、ということになる。板橋区在住の自称給水塔マニアのワタクシがまだ見たことのない給水塔が近所にあるのだとしたら、ぜひとも行ってみたいものであるが、残念ながらどうやって行ったらいいのかさっぱりわからないのである。ちなみに“都内3大給水塔”などという概念があるのか、と思ってちょっと調べてみたら、“癸卯雑識” というブログの “巡礼 0001” と題された2004年9月22日付の記事に、そのようなことが書いてあった。自分が書いた文章なので、著作権上の問題もないだろうし、せっかくの機会だからここにその全文を引用することにしたい。

9月12日付の “駒沢 0001” のところで、“世間では、中島鋭治筋のつながりかなんかで、駒沢、野方、大谷口が三点セットのように扱われているようだ”と述べた。三つそろえば権威になってハクがつくのだ。日本三景、寛永三馬術、三大ギタリスト、三大稲荷、世界三大料理などのように、その三つの中に選ばれることに価値がある。また、その三つが点在しているということになると、たとえば帝都三大給水塔などと銘打てば、たちまちお手軽な巡礼コースとなる。あちこちの七福神、七不思議、各地のお札所巡りの、三十三ヶ所、三十四ヶ所、八十八ヶ所、さらには日本百名山に至るまで、それぞれ善男善女でにぎわっているのだから、帝都三大給水塔、もっと早く気がついて商売にしておけばよかった。ポストカードぐらいは売れただろうと思う。
他人が決めたコースにしたがって、ほかのモノには目もくれずひたすら一つ一つたどって歩く。すべてを踏破したときの喜びは何モノにもかえがたい。ニホン人であることのシアワセをしみじみとかみしめるには巡礼にしくはない。


つけくわえておくと、この記事がアップされた2004年の9月といえば、東京都板橋区大谷口に配水塔(“給水塔”や“水道タンク”というのは俗称である)がまだ残っていたわけだが、東京都水道局はすぐにでも除却工事に入るぞといった姿勢を見せていたように記憶している。
ところで、今回とりあげた “オドるブログ!” という名称のブログの “坂月高架水槽” と題された2011年1月19日付の記事なのであるが、記事の内容からすれば、当該記事の筆者は2011年1月19日の段階で千葉県千葉市若葉区千城台の現地を訪れているわけではないようだ。しかし記事のトップには“坂月高架水槽”の写真が掲げられている。これは現地に行ってみたいという当該記事の筆者の思いが凝結して、はからずも念写してしまった写真なのであろうか。事情はよくわからないのだが、なんだか不思議な写真である。
posted by K.T. at 17:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑識

2011年02月10日

巷説 0004

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“Twitter”については何もわかっていないので、これからマジメにベンキョーしなければイカンと思っている。いきなりこんな“ツイート”(こちらのページ にある)に遭遇するとびっくらこいて思考停止に陥ってしまうからだ。

  大谷口給水塔前まで来ました

その下の“10:07 AM Jun 5th, 2010”というのが発信日時なのであろう。この“ツイート”は sampodow というかたが発信者のようで、“sampodow”という文字列をためしにクリックしてみたら、“sampodow”というかたのメインのページに飛んだようだ。そこにはこんなメッセージがあった。

Twitterは豊富なリアルタイム情報の宝庫です。Twitterには信じられないくらい様々な話題の情報が飛び交っています。今すぐ参加して@sampodowさんをフォローしよう!

たしかに“信じられない”情報である。2010年の6月5日に“大谷口給水塔前”と呼ばれる場所が存在したとは!
ただ“大谷口給水塔”が現実の空間に存在するものではなくて、ゲームの世界かなんかの仮想空間に存在する非実在給水塔だということであるならば、2010年にそういう“ツイート”が発信されても不思議はない。そのあたりの事情については、今の段階ではまったくわからないとしかいいようがないので、とりあえずこれくらいにしておく。
posted by K.T. at 13:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑識

2011年02月01日

巷説 0003

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“水道タンク”という語を辞書的に定義するならば、

配水塔、高架水槽等の、地上の高い位置に水槽を設置し、自然流下によって円滑に配水することを目的として整備された、上水道施設の俗称。一定の高さを持つ土木構造物であるため、ランドマークとしての機能を併せ持っている場合が多い。

といったところになろうかと思われる。文化庁の“文化遺産オンライン” で調べてみると、“水道タンク” という名称で登録有形文化財に指定されている新潟県長岡市の中島浄水場の配水塔が紹介されているし、また、新潟市新潟市にある登録有形文化財 “亀田町上水道高架水槽” の項にも、“町の近代化を支えたランドマークで,水道タンクの名で住民に広く親しまれている。” という記述が見られる。
それ以外にも、群馬県前橋市にある敷島浄水場の配水塔の通称が“水道タンク”だったり、東京都中野区にある野方配水塔の前の関東バスの停留所名が“水道タンク前”だったりするわけだが、どの土地での用例でも、“水道タンク”は“配水塔”や“高架水槽”の俗称であって、それ以外のものを指すことはかつてなかったはずである。
ところで、東京都板橋区には“水道タンク前”とか“水道タンク裏”といった名称の国際興業バスの停留所がある。その停留所の近くには、2005年まで “大谷口配水塔” という名称の上水道施設があったので、それまではそういう停留所名でまったく問題はなかったわけだが、その後、配水塔の跡地の地下に配水池が整備され、その上に配水塔の意匠を模した“ポンプ棟”という名称の珍妙な建築物(上の写真の物件)が出現するに及んで、この“ポンプ棟”を“水道タンク”と呼んでしまっていいものだろうか、という問題が生じてきた。なぜかというと、“ポンプ棟”の地上部分には水槽がもともと整備されていないからである。旧来の“水道タンク”という語の用例からすれば、これは“水道タンク”の語義から明らかに逸脱したヘンなモノである。近ごろの流行語でいえば、大谷口の水道タンクがガラパゴス的進化を遂げたモノ、ともいえなくはないような気もするが、しかしこんなモノを亀田町上水道高架水槽や野方配水塔と同列にあつかうことに抵抗をおぼえるヒトも広い世の中にはいくらかは存在するのではないだろうか。
しかし、数あるブログの記事の中には、そういう歴史的経緯にはまったく触れず、大谷口の“ポンプ棟”を“水道タンク”と称し、それを絶賛してみせる、などといったものもある。一例を挙げると、“Knブログ” という名称のブログの “大谷口の水道タンク” という2010年9月23日付の記事では、“ポンプ棟”の写真を示した上で、こう述べている。

前から噂には聞いていたのだが、先日大谷口へ行った際、はじめて実物を見た!
水道タンク!!

  (中略)

予想を上回る壮大さ!!
バス停の名前にもなってるくらいの有名な水道タンク、名前にふさわしい風格があった。


この記事が冗談ではないのだとしたら、大谷口配水塔を知るヒトには“巨大なおまる”ぐらいにしか見えないようなブサイクな建築物(“癸卯雑識” の “大谷口 0069” 参照)でも、“風格”を感じてしまうヒトがいる、ということになる。なにしろ前から噂に聞いていた“水道タンク”なのである。それに目の前のバス停は“水道タンク前”ではないか。内部に水槽が整備されていようがいまいが知ったことではない。これを“水道タンク”と呼んで何が悪い。そのような論調が、今後勢いを増して多数を占めていくような気がしてならない。そうなったら、自分がここでブツブツ文句をいっていたとしても、多勢に無勢、負け犬が雨に打たれてぐずっているようなもので、誰も相手にはしてくれないだろう。
posted by K.T. at 20:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑識