
上の写真は、2012年8月27日に撮影した、茨城県日立市にある物件の写真である。
Web上を行き交うコトバで、よくよく考えると意味がよくわからないコトバがある。ちかごろでは、“貴重”というコトバの意味がわからなくなってきた。古い辞書の語釈にはこうある。
非常に大切な(ものとする)こと。『新明解国語辞典 第2版』(三省堂 1974年)
きわめて大切なこと。「――な品」『岩波国語辞典 第3版』(岩波書店 1979年)
もうすこし新しめの辞書にはこうある。
非常に大切で得がたいさま。「貴重な人材」「貴重な体験」「貴重品」『言泉』(小学館 1986年)
拙ブログ “癸卯雑識” に、上の日立物件の写真をアップしたところ、畏友 yamazaki さんより、このようなコメントを入れていただいた。
お久しぶりです。
すごいですね、この給水塔まだ変わらず現存しているんですね。貴重です。
最後の“貴重です”の意味がわからない。そこで yamazaki さんのブログ、“給水塔見聞録” に侵入して、最新の記事 “file-416松菱金属工業葛巨塔 ” を拝読すれば、そこにも“貴重”という語が用いられていた。
今回は、以前から気になっていた給水塔です。
都下羽村市にある松菱金属工業という自動車部品の素材を製造している会社の敷地にある給水塔です。
鋼製で、結構古そうです。
こういう給水塔段々と無くなってきていますので、貴重な存在ですね。
末永く使い続けてもらいたいと思います。
『言泉』の語釈にいうところの“得がたい”、すなわち“稀少価値が高い”のほうにシフトしているのだろうか。
“越後屋たぬき” というタイトルの大谷口方面の情報が豊富なブログがあって、そこの “今だけのアングル” と題された大谷口給水所関連の記事には、こう記されている。
もうポンプ棟他給水所は完成して久しいのですが、場所が場所なので近場からの撮影はいつも同じようなアングルでした。
でも今はなかなか開放的なアングルで見ることができます。
手前にあった小中学生センターが解体されているからですね。
更地になってしばらくほっとかれると思っていたらもう区画割りの木杭が打たれ、道路もセットバックして縁石が入っていました。
北側の病院との間にはブロック積みの塀も。この調子で行くと意外に早く基礎工事に入るのかもしれません。
このアングルから見れるのもわずかの間ということでしょう。
ある意味貴重です(笑
“ある意味貴重です”の意味もわからないが、“(笑”に至っては完全に理解不能である。この記事に寄せられたブログ “龍人の独り言” の中野龍人さんのコメントにはこうある。
これはいい眺めですね。
更地になった土地越しに撮れる事って貴重と思います。
見に行きたいなぁ・・・
このやりとりからすると、ここでの“貴重”の意味は、“非常に大切なこと”というよりは、『言泉』の語釈にいうところの“得がたい”のほうなのかなぁ、とも思われるのであるが、この語に関しては、もうすこし用例を集めて検証する必要があろうかと思われるので、今日のところはこれくらいにしておく。
ついでにいうておくと、自分は大谷口の“おまる”を“見に行きたい”とは思わない。今後あのような珍品が作られることはないだろう、と判断したとしても、あれがどういう意味においても“貴重”な存在だとは考えられないからである。